ユネスコ・エコパークに登録される宮崎県綾町。
里山を蘇らせる
「イオンの森」活動も行われているこの町で
いち早くオーガニック栽培に取り組んだ
先達農家の松井道生さん。
身近な体験を出発点とする
松井農園のオーガニックの歴史は、
今、地球環境への深い思いにつながっている。
化学合成農薬の
影響
「就農は1980年、21歳の時です。当時は化学合成農薬の全盛期でしたが、自家用の野菜は多少の虫がついてもかまわんと無農薬でした。そのうち周囲に体を壊す人が増えた。安全な野菜を食べているのになんで・・・・・・化学合成農薬の影響かもしれんと考え、これからは出荷用も無農薬で作ろうと決意したんです。」
町全体が
オーガニック
松井さんが先陣を切ったオーガニック栽培は徐々に町内に広がる。そして1988年、綾町は「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定し、町全体でオーガニックに取り組むこととなった。独自の無農薬認証制度や堆肥補助金制度も始まり、みながよい堆肥を作ろうと努力した結果、町内の畑土はみるみるよくなり、野菜はよりおいしくなった。
野菜の
見栄えやカタチ
おいしさで広く知られる松井さんの野菜だが、オーガニックを始めた当初はなかなか売れなかったという。「昔は化学肥料を使った野菜もオーガニック野菜も同価格でした。でも化学肥料の野菜が先に売れる。見栄えが悪いとかで評価されんのです。おいしくて安全なのははっきりしとる、食べてもらえればこっちのもんなのにと悔しかったですねぇ。」
この場所は
地球からの借り物
おいしい野菜ができる最大の理由は環境の力だと松井さんは語る。「ユネスコ・エコパークで農業ができるってすごいことですよ。私はこの場所は地球からの借り物と思ってるんです。いずれは返すもの、決して汚してはならん土地。化学合成農薬を使っていたら土が汚れきってしまう。地球環境が変わってしまった原因はそこにあると思うんです。」
虫は洗えば落ちるが
化学合成農薬は
落ちない
「野菜に虫がついてると嫌われますけど、本来はそれが自然の姿です。虫は洗えば落ちるけど、化学合成農薬は洗っても落ちません。もちろん出荷時には虫がつかんよう細心の注意を払います。でも、目に見えない農薬ならいいのかと、もう一度考えてほしい。それは地球環境を守る大きな一歩になると思います。」
地球温暖化は
ますます
加速している
「子供の頃、冬は毎日霜柱を踏んで学校に通ったもんですが、最近はめったに見なくなりました。ここ数年、地球温暖化はますます加速してます。本当に今が最後のチャンスじゃないでしょうか。みんなが本当に必要なものだけを選んで、地球環境への負担を減らす。」
「オーガニックなら化学肥料も化学合成農薬もいらん。ほんとにいいことだらけです。」
「地球をもとのきれいな状態に戻すには
オーガニック栽培しかないと思います。
余計なものを使わずに作ったものは人の心を豊かにします。
食にはそれだけの力がありますよ。」
宮崎県東諸県郡綾町
松井農園
松井道生さん