意外に思われるかもですけど、冬は野菜の栽培にいい時期なんですよ。寒くなると野菜の身が締まって糖度が上がる。ゆっくり生長するから密に太って味が濃縮される。だから野菜本来の甘さやうまみが出るんです。
うちのレタスは低温にさらしてるから葉がやわらかく、それでいてシャキシャキ感も残っています。下葉もおいしいし、芯の部分まで甘いんですよ。そこもぜひ食べてもらいたいから、出荷ではあえて下葉を残しています。オーガニックだからこそ出せる味わいですね。
今の倍の量作っても売れるかもしれませんが、自分の目が届かないものは出したくない。おいしかったと言われてうれしいのは、自分自身の手で作るからだと思うんです。今は流通に乗ってずいぶん遠いところに届く野菜もありますが、お客さまへ届いた時に一番いい状態であるようにと常に気をつけています。
夏も作物は作れますが、うちは夏は生産を休み、畑全体にシートをかけて水を張る陽熱処理(ようねつしょり)の時期にあてます。自然の力だけでいい土を作るんです。綾町周辺ではこれを50年以上前からやっているんですよ。町内すべての畑の脇には山から水を引く潅水施設があります。オーガニックという言葉が知られるずっと前、重機もない時代に造られたもので、いわば町の財産ですね。
※陽熱処理:太陽熱を利用し、高温で土壌の殺菌消毒および防虫防草を行う処理。
オーガニックの野菜を宣伝するのに言葉はいらんですよ。食べてもらえば必ずわかるからね。ドレッシングもマヨネーズもいらんくらいおいしいですよ。自分で食べても「うめぇねー」って思います。
おいしさを言葉で伝えるのはほんとに難しい。
やはり「食べてく
ださい」としか言えません。
答えは自分の舌で感じられるはず。
それだけの説得力を持つのがオーガニック農産物ですから。